新しい生活様式で迎えた再始動コンサート ~ 感染症対策と人々の想いとは 「石田組特別公演」

レポート 音楽

7月5日、横浜みなとみらいホールは久しぶりにわくわくとした気分に包まれました。大ホール再始動を告げる、観客を迎えてのコンサートが行われたのです。

 

 

それは弦楽アンサンブル「石田組」のコンサート。「石田組」は神奈川フィルハーモニー管弦楽団の首席ソロ・コンサートマスターを務める石田泰尚さんの呼びかけで結成された合奏団です。ここ横浜みなとみらいホールは2014年にデビュー公演を行った縁の深い場所。これまで2000席を満杯にしてきた人気と実力を誇ります。

この日は2000席に対してチケットは 500席限定で発売されました。

 

来場した人たちは静かな興奮を胸にいだいている様子でしたが、コンサートはスタンディング・オベーションの嵐のような拍手で終わり、どなたも笑顔で満足げに帰途についていました。

 

 

終演後、鶴見から来たという母娘に感想を聞くと、

「感動しました、涙が出ました。神奈川フィルの演奏会でコンマスの石田さんのファンになって以来、石田組のコンサートには必ず行っていたんです。テレビとは違って生の演奏はやはりいいですね」。「2月以来、待ちに待ったコンサートでした。感染予防対策はしっかりとされていたので安心でした」

と嬉しそうに顔を見合わせていました。

 

 

安心・安全に生演奏を楽しんでもらうためにと、このコンサート会場では様々な感染症対策が講じられていました。主催者、ホール、演奏家の熱い思いがひとつになったコンサートは、お客さまの心にしっかりと伝わったようです。

さて、どのように行われたかというと…。

 


 

コンサートは新型コロナウイルス感染予防のため、「横浜市文化施設における新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」に沿って開催されました。横浜みなとみらいホール運営担当の渡邊文人さんは、この数カ月いつ再開されてもいいように対策を練ってきたと言います。

 

消毒液はエントランスの他、各階のホワイエや楽屋口など、複数設置されていました。

 

間隔を開けて入場の列につきます。開場時間は1時間前だったので人が集中することなく入場できました。

 

会場案内や受付のスタッフはフェイスシールドを着用。

名前や連絡先を記入したチケットの半券は自分で切り取って箱に入れます。

 

プログラムはスタッフからの手渡しではなく、積んであるところからお客様自身が手に取るスタイル。

 

サーモグラフィーで発熱者を検知するシステムもこの日から稼働しました。

 

 

席の間隔があいていることもあり、客席は開演前から静寂に包まれ、心地よい緊張感と期待が高まります。

開演直後、チューニングの音にもう胸がいっぱいに。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの弓が弦をこすって出てくる生の音がホールに広がっていきます。久しぶりに聴いた、見事に息のあった弦楽アンサンブルの響きに感動です。

 

ステージ後方の客席を見ると、間隔をあけて着席しているのがよくわかります。

 

後半、トークタイムをはさんで、タンゴの巨匠のピアソラの曲が奏でられ、演奏は熱を帯びてきました。石田さんも大きな身振りで情熱的に魅了します。

本当だったら「ブラヴォー!」と叫びたいところですが、その分、力いっぱいの拍手を送ります。

 

 

全7曲のプログラムを演奏し終えると、大きな拍手に応えてのアンコールがありました。その最後に演奏されたのはクイーンの「I was born to love you」です。 立ち上がって拍手する人が次々にあらわれ、客席はついにスタンディング・オベーションの嵐に包まれました。

 

 

終演後、来場者はエリア毎に退場する分散退場でした。自分の席がコールされるまで待つのも新しい様式のひとつです。人が密集しがちなアンコールボードの掲示もなく、アンコール曲目はSNSで紹介されました。

 

 

 

 

演奏を終えた石田泰尚さんにお話をうかがいました。

 

「ご縁の深い横浜みなとみらいホールの大ホール再始動コンサートに出演できて、とても光栄です。たくさんの人がスタンディング・オベーションしてくれた光景は、舞台上から初めて見るすごいものでした。とても嬉しかったです。

このコンサートを実現してくれた主催者の神奈川芸術協会、会場を万全に準備してくれた横浜みなとみらいホール、そしていらしていただいたお客さまに感謝です。

今日はたった500人の客席でしたが、コロナ禍以前のように満場のお客さまを前に演奏する日が来るといいですね。僕はお客さまの前でこそ燃えるので」

 

楽屋の人数制限や消毒など、舞台裏でもきっちりと対策が取られていました。

 

 

主催者の神奈川芸術協会の代表取締役・千田善道さんはこの日を迎えてどのような思いでしょうか?

 

「やっと無事に今日を迎えることができました。2月末から中止・延期になった公演は50以上で、これまでの苦労は語りきれませんが、今日お客さまの満足げに帰っていく顔を見ることができて、本当に嬉しいです。

横浜みなとみらいホールの大ホールの再始動にあたって、石田組をキャスティングしたのは、横浜のみなさまに愛されているアーティストとともにぜひ迎えたかったからです。急なオファーに石田組は応えて、すぐにリハーサルを始めてくれました。

お客さまも、あらかじめ配布したお願いの文書をみなさん読んでくださって、ブラヴォーの声援のかわりにスタンディング・オベーションをしてくださって感激しました。音楽を届けることの幸せをかみしめています」

 

 

 

終演後、横須賀から来たというご夫婦にもお話を伺うと、

「石田さんのあのクールな外見と美しい音色のギャップがかっこいいので大ファンなんです。今日は大好きなピアソラの曲が 生で聴けてとても嬉しかったですね」と満足そうに帰途についていました。

 

生の演奏を聴く喜びを久しぶりに安心して味わうことのできたこのコンサート。演奏者、主催者、実施会場の入念な準備と観客の協力によって実現しました。またコンサートホールに行きたいなぁとの願いが一段と強くなりました。

 

本公演の一部はYou Tubeで視聴可能です。https://youtu.be/BdGzOze-C8E


 

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取材・文/猪上杉子  写真/平舘平

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