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ようこそ区文へ!

vol.7 戸塚区民文化センター さくらプラザ

横浜市内11の区にある区民文化センター(区文)を順次ご紹介するシリーズの第7回は、横浜市戸塚区民文化センター、愛称は「さくらプラザ」です。戸塚区の区花の桜が愛称の由来です。開館は2013年、来年10周年を迎える比較的若い区文ですが、本格的な音響機能が自慢のホールを中心に、地域のアーティストや幅広い層の住民の活動の場となっています。全館を挙げて賑やかに繰り広げられた「春の芸術祭 2022」の様子を取材するとともに、事業企画スタッフの近藤喬之さん(写真左)、山上由布子さん(写真右)に「さくらプラザ」の取り組みを聞きました。

 

➤これまでの「ようこそ区文へ!」シリーズの記事はこちら


JRと横浜市営地下鉄の戸塚駅からほど近い、戸塚区総合庁舎の3、4階に「さくらプラザ」はあります。2022年2月10日〜12日の3日間にわたって開かれた「春の芸術祭2022」は、さくらプラザの全館を使って開催される大きな年間イベントのひとつ。ホールでのコンサート出演者、ギャラリーでの出展者、マルシェでの販売主は、横浜を拠点として活動している個人・団体であることを条件に、昨秋募集されました。

企画・制作・広報を担当する山上さんは、「『大人の文化祭』のような行事です。昨年は開催できず、2年ぶり6回目の開催の運びとなりました。昨年の秋頃から準備をしてきたので、今日の賑わいはとても嬉しいです」と話しながら、会場のあちらこちらを駆け回っていました。

ホールの座席は間隔を取って50%に制限。多くのお客様が来場されました

2月12日の午後、「さくらプラザ・ホール」では6組の出演者によるコンサートが開幕しました。トップバッターのRyutaさんはキーボード奏者でシンガーソングライター。「さくらプラザ」の推薦で出演したアーティストの1人です。この日は、ロングジャケットに白いパンツのスタイルで、『愛の讃歌』など3曲を自身のアレンジで弾き、喝采を浴びました。

演奏を終えたRyutaさんにお話を聞くと、戸塚でのコンサート出演は初めてだそうですが、明治学院大学の横浜キャンパスが戸塚にあったため、通学した縁のある地とのこと。
「戸塚はとても穏やかで温かい街だといつも思います。学生時代にお世話になったこの街に演奏でご恩返しをしたいなと思っています。エフエム戸塚のパーソナリティを務めた経験もありますので、これからもどんどん戸塚との縁を深めていきたいですね」

このコンサートに出演する6団体は、クラシック音楽や、民族音楽、ゴスペルなど、その演奏スタイルやジャンルも様々。エフエム戸塚パーソナリティでもある松村優吾(指揮・ピアノ・作曲)さんと井出司(テノール)さんが司会を務め、出演者を紹介したり普段の活動の様子や戸塚区とのゆかりなどを聞き出したりと、和気あいあいのムードでステージが進行します。

5番目に出演した「栗原武啓 津軽三絃会」は、戸塚区在住の津軽三味線奏者・栗原武啓さんと、そのお弟子さんによる団体です。戸塚生まれの栗原さんにうかがうと「戸塚は東海道の宿場町だった歴史的背景が自慢の古い街ですが、最近の変貌ぶりには驚いています。駅前の再開発など新しい顔もありますが、少し歩くと昔ながらの自然豊かな姿もまだ残っています。さくらプラザ『春の芸術祭』には初めて出演しましたが、ホールの響きがとてもいいですね」と話してくださいました。

迫力のある津軽三味線の合奏

一方、ギャラリーでは6団体による作品が展示されていました。植物や風景を描いた絵画、似顔絵、子ども達による造形作品など、色鮮やかな作品が並びます。さまざまな世代の人が足を止めて、出展者と会話を交わす姿もありました。

3日間にわたり開催された「春の芸術祭2022」は、コンサートあり、アート作品の展示あり、手作り作品販売のマルシェありの、まさに「文化祭」のような活気と賑わいが感じられ、ここ「さくらプラザ」が地域の人々やアーティストたちに親しまれている様子がうかがえました。

リハーサル室はマルシェの会場になっていました。5団体が出展し、アクセサリーや布小物などを販売していました

大きなイベントを終えた数日後、事業企画責任者の近藤さんと山上さんにあらためてお話を伺いました。

山上さんはさくらプラザの特徴を「なんといってもクラシック音楽に適した音響反射板形式のホールがありますから、この場を活用することに力を注いでいます。そして、戸塚区には歴史のある地域に根付いた多くの演奏家や団体がおり、アーティストの層が厚いことでも知られる地域です。アーティストを大事に支援することも常に考えています」と話します。取材に伺った「春の芸術際2022」も、そんな地域のアーティストの方々と一緒に作り上げたものの1つでした。

*クラシック音楽に適した「音響反射板形式」の舞台 ©Hiroshi Togo

近藤さんに戸塚区の特徴や魅力を伺うと「横浜市で一番面積が広い区で、その区内にはバス網が張り巡らされていて、バスで来館される方も多いです。また、東海道ゆかりの歴史のある地域であることと、新しい住民の増加との、新旧が入り混じった地域であることも特徴ですね。ですからどちらの方々にも受け入れていただき、親しんでいただけるような企画づくりを意識しています。また、若いアーティストを支援する仕組みづくりとその実施にも力を尽くしています」と話します。

アーティスト支援の仕組みのひとつが2016年に開始した「さくらプラザ特待生」と称する事業です。概ね13歳から24歳までのプロの演奏家・表現者を志すアーティストを公募。「特待生」となった人は、さくらプラザ主催事業の鑑賞がすべて無料となります。また、鑑賞後のアンケート・感想の提出や、特待生同士のミーティングへの参加などが条件となっており、育成の要素も兼ね備えたプログラムです。「さくらプラザ特待生」の第3期生は4月1日から3年間の任期が始まります。

「芸術に触れる機会は一期一会。生演奏でしか味わえない感動を、音響のいい『さくらプラザ』でどんどん味わっていただきたいと考えています」と山上さんは話します。

*3月5日には「さくらプラザ特待生コンサート」が初めて開催され、第1期生と第2期生の7名が演奏を披露しました

また、さくらプラザでは「SAKURA」という情報誌を隔月で発行しています。開館してすぐに第1号を発刊し、累計53号を数えます。巻頭の主催事業に関する特集もさることながら、戸塚区内の美術品・アート作品などを紹介する「あーとつか」、戸塚在住の人物紹介の「見返戸塚人」や、地域の企業を紹介する「地域のイマ、とコレカラ」といったスタッフの取材によるコラムがユニーク。スタッフ全員でこの企画・編集にかかわっており、広い地域に散らばる多様な人々をひとつにつなごうとする思いが伝わってきます。

*情報誌「SAKURA」

現在、「さくらチャレンジプロジェクト」と題して、戸塚区民に呼びかけて区民企画事業を公募中です。募集テーマは「世代間の交流を促す芸術文化事業」。4月12日には説明会・施設見学会を実施して、区民からの発案企画の実現をスタッフがサポートするなど、このプロジェクトにも力を入れて取り組んでいます。

最後に、これからのことを近藤さんにお聞きしました。「地域の方々との連携を、文化・芸術を通してさらに深めていきたいですね。たとえば、地域の企業や活動団体の内容を知ることができるような、新たな区民参加企画を提案していきたいと思います」

地域のアーティストたち、そして子どもから大人までの多様な人々を全力で応援したいと努力を重ねる姿が見えました。



●Information

横浜市戸塚区民文化センター さくらプラザ
➤アクセス  JR/市営地下鉄 戸塚駅西口より徒歩2分
➤WEBサイト https://totsuka.hall-info.jp/

●Event
横浜市戸塚区民文化センターさくらプラザでこれから開催されるイベントはこちら



●戸塚区内のおすすめスポット
 Sala MASAKA(横浜市戸塚区品濃町514-13)

JR東戸塚駅から徒歩5分。中欧チェコ共和国のピアノ「PETROF」を常設した、響きにこだわりを持つ音楽サロンで、クラシック音楽やジャズなどの演奏会が開催されています。トレードマークとなる大きな音響反射板、天井高6mの空間を漂う音は心に沁みわたります。

➤アートスポット紹介ページ https://artnavi.yokohama/art-spot/11248/


取材・文:猪上杉子
写真:大野隆介(*印の写真以外)

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