「あじさいプラザ」は、相鉄線瀬谷駅南口からバリアフリーの屋根付きデッキを通ってわずか1分、ライブゲート瀬谷の3階と4階にあります。3階受付前のエントランスホールには、オープンを祝う花輪やポスター、来場者がお祝いの言葉を書き込めるメッセージボードが飾られ、オープン初日らしい華やかな雰囲気に包まれていました。
瀬谷区には座席数500余りの音楽ホールを備えた公会堂がありますが、小ホールのようなスペースやギャラリースペースも欲しいという要望が多かったそうです。そうした区民の声からできた施設を、桝田館長に案内していただくと、要望が反映されたという「あじさいプラザ」らしさが随所に見受けられました。
3階はギャラリーと会議室が設置され、主に展示会が開催できるエリアになっています。その他、情報コーナーや販売機、授乳室も完備され、買い物帰りなどにも気軽に立ち寄れるフロアです。
要望がとても大きかったので特に力を入れた、というギャラリーは中央の通路を挟んで対面する形でギャラリー1とギャラリー2があります。
このギャラリーの最大の特徴は壁面が可動式になっていて展示スペースを様々な形にレイアウトできること。そのため、小規模な展示から大規模な作品展まで、作品や展覧会のイメージに合わせて自由に空間を利用することができます。
ギャラリー1と2を使って、広く奥行きのある展示をしたり、複数に区切ってテーマ別に展示したり、また展示と同時にワークショップを開催する等、無数の利用法が考えられるギャラリーになっています。
同じフロアにある会議室A・会議室B・会議室Cもギャラリー同様に壁面を動かすことができ、全室つなげれば最大54名での利用が可能となっています。付帯設備のプロジェクターやマイク、ホワイトボード等合わせて、講座や講習会、研修会など人数によって使い方が選べる仕組みになっています。
「3階はギャラリーと会議室の両方を使って、フロア全体を展示に利用いただくこともできて、本当に自由度が高いスペースなのでこれからが楽しみです」と桝田館長がおっしゃるように、どのような展示が行われるのか期待が高まるギャラリーでした。
4階には音楽多目的室、練習室1、練習室2があります。
エスカレーターで上がって行くと、漆喰をイメージさせる壁面を繭のような形の間接照明が照らしていました。昔、瀬谷では養蚕が盛んだったそうで、それをモチーフに設計したとのこと。こうした細部の作りにも瀬谷らしさが表現されていました。
木のぬくもりを大切にしたという音楽多目的室は、可動式のステージとグランドピアノ、音響設備や照明設備を備え、ステージ利用時はイスを120席並べられる小ホールになっています。
この部屋で最も特徴的な設備が、昇降装置付きステージです。60cm程の高さから床面と同じ高さまで無段階に調整でき、床がフラットな広い空間としてコンサートや発表会、人数の多い吹奏楽の練習やダンスにも活用できるよう工夫されていました。
「瀬谷区はダンスをされている方も多いと聞きますので、壁面には鏡を設置しました」
ダンスレッスンも可能なホールは、今後の利用予定を見ても、音楽の発表会やコンサートはもちろん、ハワイアンダンス、ダンス体験・発表会、津軽三味線コンサートに落語や合唱などバラエティー豊かなリストが並んでいます。
中でもあじさいプラザ主催の落語会は「あじぷら亭」と題して、ベテランから若手まで、様々な噺家の話芸が楽しめる企画です。今後、定期開催も予定されています。
練習室1は、少人数のアンサンブルや弦楽器、管楽器の単独練習の他、三味線等の練習にも利用できる防音室になっています。この部屋の特徴は、練習室としては珍しくグランドピアノが常設されている点。これは、コンクールや発表会でグランドピアノが使われるため、本番に近い環境での練習を行いたいという区民の声を反映させたものだそうです。
練習室2には、ドラムセットやギターアンプ、ベースアンプ、キーボード等が設置され、バンド練習に適した部屋です。ロックやポップス、ジャズトリオやカルテット等、少人数での利用を前提とした部屋になっています。
こうして多様な芸術文化活動に利用できる「あじさいプラザ」は、開館記念公演も一味違った企画、アルゼンチンタンゴ・コンサートが用意されていました。
一流の演奏家が集まり2012年に結成されたアルゼンチンタンゴバンド「Mentao(メンターオ)」はバンドネオン奏者の池田達則さんが地元・瀬谷区出身ということで、オープニングイベント「あじさいプラザ開館記念公演」への出演が決まったそうです。
当日は、バンドネオンの池田さん他、ピアノ(松永裕平さん)、コントラバス(田中伸司さん)、ヴァイオリン(専光秀紀さん)の4人編成で演奏が始まり、一曲目が終わると「実は僕は、瀬谷で育ったんです。これまで地元であまり演奏をしてこなかったのですが、オープンの日に呼んでいただきとても有りがたく思っています」とコメントされていました。
二部制で行われたコンサートは、演奏だけでなく楽曲にまつわるお話や、使われている楽器のこと、タンゴならではの特殊奏法の紹介など、タンゴファンはもちろん、初めてでも楽しめる内容で、すぐにチケットが完売したというのも頷けます。
時に唄うように、また語るように奏でられるタンゴサウンドは、コンパクトなホールならではの迫力と緊張感に包まれ、曲が終わるたびに盛大な拍手が贈られていました。
来場された方のアンケートにも「地元にこんなに素晴らしいタンゴ奏者がいることを知り全身で感動した」「コロナ禍を吹きとばす熱のこもったすばらしい演奏」「トークも楽しくアットホームで良かった」と大好評で、定期的に開催してほしいという声が多数寄せられていました。
もうひとつのオープニングイベント「瀬谷区美術協会あじさいプラザ開館記念展」は、ギャラリー、会議室の全てを使った大規模な作品展でした。
油絵、水彩画、アクリル、鉛筆、写真と様々な技法を駆使した力作が143点、美術協会会員の作品コーナー、交流のある他地区の招待者コーナー、横浜隼人中学・高校の生徒さんの作品エリアと、それぞれコーナーに分けて展示されていました。
多くの来場者が鑑賞に訪れる中、オープン初日ということもあり、現場にいらした会長の宮崎和之さんと協会立ち上げに携わった浅野康則さんにお話を伺うことができました。
美術展の開催を行っていた瀬谷区美術展実行委員会が、待ち望んでいた区民文化センター開館を機に移行したのが瀬谷区美術協会だそうで、「今後は展覧会以外にも事業展開をして、瀬谷区の美術文化の発展に貢献し、瀬谷から文化を発信したい」と語ってくれました。
オープン前から注目度が高く、区民からの期待も大きかったという「あじさいプラザ」。無事に初日を迎え今後の企画について桝田館長に尋ねると「多くの方に芸術文化を広げて行ける拠点にしたいと思っていますので、あまり音楽や美術に触れる機会のない、例えば普段はスポーツをしているという方々にも来ていただけるような、芸術とスポーツが融合した企画ができないか等も検討しています」
瀬谷ならではの企画や芸術文化を身近に感じられる、伝えていける場になればと思っているとおっしゃっていました。