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ようこそ区文へ!

vol.10 神奈川区民文化センター かなっくホール

横浜市内11の区にある区民文化センター(区文)を順次ご紹介するシリーズの第10回は、神奈川区民文化センター、愛称「かなっくホール」です。開館18年を迎え、ますます充実した活動を続けている「かなっくホール」。2016年度にワンコイン60分レクチャーコンサートとしてスタートしたシリーズ企画「音楽史の旅」を取材するとともに、冨田達也・館長と同館の多彩な事業の企画を担う齊藤実雪さんに施設の特徴や事業の魅力について伺いました。

 

▶これまでの「ようこそ区文へ!」シリーズの記事はこちら

JR東神奈川駅東口に出ると「かなっくウォーク」と呼ばれるペデストリアンデッキ(高架で設置された歩行者専用通路)に出て右側にあるビルの入り口がもうホールの入り口となります。駅から近い、というホールはけっこうありますが、ここまで近いホールは珍しいのではないでしょうか。京急東神奈川駅からも同じく「かなっくウォーク」を歩いて1分、東急東横線東白楽駅からは徒歩で10分です。ホールに入るとそこはインフォメーションセンターになっており、左側全面にチラシが並び、右側が受付です。臆することなく入れる自然さがうれしいです。
かなっくホール自体はこのビルの2階から4階で、2階には300席のホールがあります。クラシックコンサートをはじめ、音楽イベント、演劇、発表会などさまざまなジャンルの舞台公演に対応した多目的ホールです。椅子の配置はゆったりとしており、ベージュ系で統一されたホールはどこに座ってもストレスなく、居心地の良い空間です。ホワイエはガラス張りで自然光がたっぷり入り開放的で、眼前には駅前広場が拡がります。

まず、ホールでの『ランチタイムコンサート「音楽史の旅」④シューベルトのピアノ曲』を取材しました。公演の前15分間プレトークがあり、羽織袴姿で鼓を携えた二人、囃子方の望月秀幸と望月左太寿郎が登場してきました。

左:ホワイトボードを使って説明するホールプロデューサー齊藤実雪さん、右:囃子方の望月秀幸さんと望月左太寿郎さん

二人は、同ホールで継続して行われている「かなっくde 小鼓教室」と「お囃子プロジェクト」の紹介にやってきたのでした。軽妙な語り口とホールに響き渡る凛とした鼓の音にとても気持ちが高まりました。

鼓を打つ音も立ち姿も美しい望月左太寿郎さん

続くコンサートは、音楽ファシリテーターの飯田有抄さんの司会・解説、ピアニスト倉田莉奈さんによる演奏で、『楽興の時』D.780より第3番 へ短調、『4つの即興曲集』D.899より第3番 変ト長調、『ピアノ・ソナタ』第21番 変ロ長調 D.960の3曲が披露されました。

左:飯田有抄さん、右:倉田莉奈さん

お客さまはとても熱心で、大変集中していらっしゃいました。終演後すぐ、熱演の余韻がさめやらぬ中、ホワイエにいらしたお客様の一人、滝本さんにお話をお聞きすることができました。ホールにはよくコンサートを聴きにいらっしゃるとのこと。「横浜みなとみらいホールや神奈川県民ホールにもよく行きます。プロのアーティストの演奏をたくさん聴きたいです」とおっしゃっていました。ライブで聴く楽しさをよくご存知のようでした。

かなっくホールの公演によく訪れるという滝本さん

コンサートに出演された倉田莉奈さんと飯田有抄さんにお話をお聞きするため、終演後の楽屋にお邪魔しました。

「『音楽史の旅』は全6回シリーズで、前半3回はバッハ、後半3回のシューベルトは今日が1回目です。回収したアンケートを読むと細かく感想を書いてくださり、解説も学べて楽しかったと言ってくださいます。演奏を真面目に聴いていらっしゃって、とても勉強熱心なお客様です」と飯田さんはこのコンサートシリーズの雰囲気を教えてくださいました。また「もちろん、初めていらしたお客様にも楽しんでいただきたいという思いはあります。いわゆる曲の解説的なことに特化するのでなく、年齢層を考えて歴史の教養もおありだろうと考え、作品が書かれた頃の歴史上の出来事とリンクさせてどういう社会事情の中で生まれた曲なのかということに触れたりもします」と解説で話す内容についての考えも話してくださいました。

ピアニストの倉田莉奈さんは「自分で曲紹介をして弾くこともあるのですが、これほどしっかりとプロの方が解説してくれる機会はないです。演奏の間にお話が入った方が1時間のコンサートのストーリーのような流れが生まれるので私も入りやすいです。自分で気持ちを作らずともシューベルトの話を聞きながらシューベルトの人生をそのまま演奏に乗せるという感覚になります」と演奏する立場の方ならではの感想を語ってくださいました。

このコンサートを企画したかなっくホールのプロデューサー齊藤実雪さんは、長い時間をかけてこのホールを訪れるお客様をクラシック通にしたいと考えており、かなっくホールは「ハブ・ホール」であると謳っているとのこと。ここでクラシック音楽の理解を深めてから、横浜みなとみらいホール、ミューザ川崎シンフォニーホールや神奈川県立音楽堂等のコンサートに出かけるようになっていただきたいのだそうです。「音楽に限らず、演劇、ダンスも含め、あらゆる芸術の入り口としてかなっくホールでたくさんの芸術体験をしていただけるよう企画しています。
年齢に関係なく、教育プログラム、キッズデーやワークショップなども行っています。何の前知識もない高齢者がコンテンポラリー・ダンスを鑑賞するようなこともあります」。

かなっくホールは「ハブ・ホール」でありたいと、プロデューサーの齊藤実雪さん

さらに空いている施設を創作の場として利用してもらい、創作過程、新作を発表してもらうために「かなっくフレンズ」というレジデント・アーティストも迎えているそうです。一つ公演に来るとあれもこれもとなりいつの間にかホールのファンになっている。こうした意欲的な取組を続ける同ホールの企画はこれからも目が離せません。

 

3階にはA、B二つのギャラリーがあり、絵画、写真、書道、工芸などの美術作品の展示、発表に適しています。可動展示パネルを備えておりアイデア次第で展示壁を作ることができますし、ギャラリーA・Bを合わせて利用することもできます。
ギャラリーBでは「ひなちゃんママの陶芸作品展〜癒しの器〜」という作品展が行われていました。
「10年ほど前から2年に1度、作品展を開いています。ここのギャラリーは駅から近く、広いし使いやすいのが魅力です。コロナ禍の前は借りたい人が多くて抽選が大変だったんですよ。コンサートにいらした方が帰りに立ち寄ってくださったりします」と代表の梶原公子さん。

生徒さんの創造性に委ねることで多様な作品が生まれますと、「ひなちゃんママの陶芸教室」代表の梶原公子さん

小学6年生から81歳の方まで、そして初心者から10年以上のキャリアの方まで習っているとのことで、個性豊かな作品が賑やかに展示されていました。

 

4階には小規模の公演、発表会も行えるグランドピアノを備えた音楽ルームがあります。演劇、ダンス、などの練習のほか研修やワークショップに使用できる多目的スペースです。そして防音完備の練習室がA、Bと二つあります。
練習室AではNEXUSという朗読のグループの方にお会いしました。「図書館での朗読会にボランティアで参加しています。図書館の本を借りてもらうためなので、朗読する本に偏りがないようにしています」と黒沢ちゑ子さん。他に鈴木眞也子さん、山口守俊さんの3人。お願いして少し朗読していただいたところ、みなさんとてもよく通る声をお持ちです。

左:朗読グループ「NEXUS」の鈴木眞也子さん、黒沢ちゑ子さん、山口守俊さん。右:よく通る声で一節を披露する黒沢ちゑ子さん

練習室Bではリコーダーの練習をされていました。「リコーダー カメさんたち」の兼平和子さんは講師として定期的にここで生徒さんに教えているそうです。思いがけずさまざまなリコーダーを見せていただきました。

それぞれのペースで楽しいレッスンを心掛ける「リコーダー カメさんたち」の講師・兼平和子さん(右)と生徒さん

どちらも防音完備なので音が漏れることは全くなく、思いきり練習できるのがうらやましく思いました。

最後に、冨田達也館長にお話をお聞きしました。「駅から近く利用しやすいことが魅力ですね。貸し館はじめ、利用者に気持ちよく、安心して使っていただけるよう心がけています。芸術に気軽に親しみ、心豊かな気持ちになってもらいたいです」。利用者のアンケートも毎回高評価だそうで、すっかり地元に根付いた「自分の街のホール」として愛され、親しまれていることが感じられました。


●Information
横浜市神奈川区民文化センター かなっくホール
➤アクセス JR 東神奈川駅から / 京浜急行 東神奈川駅(旧・仲木戸駅)から連絡橋「かなっくウォーク」徒歩1分東急東横線 東白楽駅から徒歩10分
➤WEBサイト http://kanack-hall.info

●Event
横浜市神奈川区民文化センター かなっくホールでこれから開催されるイベントはこちら
2022年度 かなっくクラシック音楽部ランチタイムコンサート「音楽史の旅」
【④~⑥後期テーマ/フランツ・ペーター・シューベルト】
⑤2023年1月26日(木)シューベルトの歌曲 出演:大山大輔(バリトン)、宇根美沙恵(ピアノ)
⑥2023年3月30日(木)カメラータかなっく(室内オーケストラ) 出演:カメラータかなっく


●かなっくホール近くのおすすめスポット
洋食屋の自家製ハンバーグ CAFÉ & DINING KUBOTA食堂

左:KUBOTA食堂正面、右:貴重なKUBOTA食堂 創業当時の写真を掲げるオーナーの窪田俊治さん

かなっくホールと同じビルの1階にあり、ホールに出演のアーティスト、施設利用者、スタッフといったホール関係者はもちろん、近隣の皆さんにも愛されている洋食屋さん。1947年創業で、以来3代に亘ってのれんを守り続けています、と、オーナーの窪田俊治さん。木戸を開け店内に入ると、賑やかな入口とは一転し、表情のある木をふんだんに使い柔らかい照明が包み込むような和モダンの素敵な雰囲気です。デザートメニューやディナーメニューも充実しており、さまざまな時間帯に多様な利用ができそうです。かなっくホールを訪れる際に、ぜひ同店でお腹も満たしてみては。

➤KUBOTA食堂 https://a632700.gorp.jp/
※営業時間など詳細は、公式WEBサイトをご確認ください。

 


取材・文:結城美穂子
写真:大野隆介

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