神奈川県立地球市民かながわプラザ(あーすぷらざ)に行ってきました

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ヨコハマ・アートナビでは横浜市内のアートスポットをご紹介しています。その中でも、とりわけ特徴的な取り組みを行っている施設のひとつが「神奈川県立地球市民かながわプラザ(あーすぷらざ)」(以下、あーすぷらざ)です。今年6月に当サイトのよむナビで「ひとに話したくなる秘密のインド展」の展示紹介動画を取り上げましたが、年数回、このような世界の文化をテーマにした企画展が開催されています。「国際理解」「多文化共生」「平和」「子ども」をキーワードにした総合的な施設・・・ということなのですが、どのような場所なのか、気になったので行ってきました!

 

 

JR根岸線・本郷台駅を出て左に進むと、目の前に銀色に輝くそして不思議な形の建物が見えます。その建物を目指して徒歩3分、ここが目的地です。宇宙船をイメージして建てられているということもあり、今にも飛んでいきそうな迫力です。

 

 

中に入ると大きな吹き抜けがあり、天井のステンドグラスから光が差し込みます。この宇宙船はどこに連れていってくれるのだろう、という冒険前のような気持ちになります。この吹き抜けを中心に放射線状に配置されているのが、横浜市栄区民文化センター リリス、国際言語文化アカデミア、そしてあーすぷらざです。

 

あーすぷらざは、1998年2月に開館した神奈川県の施設です。1階から5階までの建物内に、国際理解や平和をテーマにした3つの常設展示室、企画展示室、図書・映像資料のライブラリーがあり、またホールや会議室など様々な個人・団体が利用できるスペースが整っています。展示内容や設備が充実した施設なのですが、この中でも特にアートに関連する部分を中心にご紹介していきたいと思います。

 

 

■5階 常設展示室エリア
 「こどもの国際理解展示室」「国際平和展示室」「こどもファンタジー展示室」

 

エレベーターに乗って5階へ。この階には3つの常設展示室があります。最初に「こどもの国際理解展示室」に入りました。

 

 

ここは、人々の衣食住や仕事、心の表現を通して、世界の人々の暮らしや文化を知ることができる展示室です。広々としたスペースに、再現家屋、乗り物や衣装、生活道具、楽器などが展示されていて、実際に触れるなどして体験しながら学べるようになっています。

 

高床式のチャークリンくんの家の下には、タイの3輪タクシー「トゥクトゥク」が。実際に乗ってみると、まるで旅行に来た気分にもなりました

 

展示室の中で一段とカラフルで目立っていたのが、リクシャーという乗り物。日本の人力車がルーツで、バングラデシュ等で市民の毎日の移動手段として利用されている、いわゆる自転車タクシーです。

展示の脇には、説明書きや画像の他に、実際にリクシャーが走っている現地の様子も映像で見られるようになっていて、理解が深まります。

 

 

このリクシャー、鮮やかな装飾が目に入りますが、絵の他にもシールのようなもので飾られていたり、造花がさしてあったりと、とにかく派手!

 

背面にはめ込まれたブリキの板にはライオンや猿など、動物の絵が描かれています。ここには華やかな映画の世界や懐かしい農村風景、政治家や風刺画、動物などが描かれることが多いそうです。これはリクシャーアートといわれていて、この絵を描くことを専門にしているアーティストがいるといいます。

 

 

 

さて、次は世界の楽器が展示されているコーナーへ。

馬頭琴など、学校で教えてもらったことがある楽器から、初めて目にするような楽器まで、はじく・こする楽器、ふく楽器、たたく楽器などに分けられ、約40種類の楽器が展示されています。

 

 

写真の右から2つ目、不思議な形の「ルースン」という中国の楽器。どんな音がでるんだろう…と疑問に思った時、モニターの存在に気づきました。ピピッと操作をすると…この楽器を演奏する人々の映像を見ることができました。ちょっとした疑問を解決してくれる、こういった配慮も嬉しいですね。

ちなみに、このルースンは中国南西地域のミャオ族、ヤオ族、トン族などの少数民族の竹管楽器です。このような珍しい楽器にも出会うことができました。

 

そして、実際に演奏できる楽器もいくつか置いてあります。

 

 

トリニダード・トバゴ共和国で生まれた楽器、スティールパンを演奏してみました。カリブ海の陽気なリズム…までは演奏できませんでしたが、明るい音が響きます。

 

これらの楽器は「世界の人々の心の表現」を伝えるために展示されています。世界各地のお祝い、お祭り、葬式などの場に音楽は欠かせないものとなっています。また嬉しい時、悲しい時など、様々な感情を演奏や歌、踊りで表現してきたことは世界共通であり、人々の心を理解するための重要な表現であることも教えてくれました。

 

この展示室には他にも民族衣装体験や世界各地の遊び体験、仕事や子どもたちの暮らしが再現されているエリアがあり、時間が過ぎるのを忘れて見入ってしまうほどでした。

 

 

こちらのブースでは、韓国のチマ・チョゴリを体験できます。(新型コロナウイルスの影響で、体験できる衣装の数を減らしています)

 

 

こちらは「パパンチョンカ」という海外の遊びで、別名マンカラなど、地域によって様々な呼び名があります。おはじきが入っていましたが、海外では貝を使って遊ぶそうです。

この他にも、実際に遊べる世界の様々なボードゲームがありました。

 

 

こちらはブラジルのバブーダさんのお店です。

スタッフ手作りの説明書きも展示室内の各所に置かれています。クイズ形式にもなっていて、こども同士でも、親子でも、大人だけでも楽しめる展示になっています。

 

コロナ禍で外国にも簡単に行けない状況でもありますが、この展示室に来れば、いつでも海外の文化を気軽に体験し学ぶことができる、とても有意義な時間を過ごせる場所でした。

 

 

続いて、お隣の「国際平和展示室」へ。

 

 

ここは、戦争の時代、そして現在の地球規模の社会課題を通し、平和を考える展示室です。

難しいと捉えられがちなテーマですが、写真、映像、文字、絵本、そして実際に使用されていた道具や衣類などといった実物を使って、子どもから大人まで、全ての人に易しく伝わるような展示内容となっていました。

 

世界の食糧事情について、栄養不足人口が色分けで示されたハンガーマップと、「世界がもし100人の村だったら」を表現した模型です

 

 

次の「こどもファンタジー展示室」へ向かう途中、宇宙空間へ飛び出すゲートの様な通路がありました。ここは外から見えていた橋のような部分で、この階に繋がっていたというわけです。

 

 

「平和の架け橋」と呼ばれているこの通路には、「カナガワビエンナーレ国際児童画展」の過去の応募作品から、猫が描かれている絵が展示されていました。この展覧会は、海外及び神奈川県内から児童画を公募し、展示する国際児童画展で、1981年に第1回展を実施して以来、隔年開催されています。

 

あーすぷらざの館内各所には受賞者たちによる壁画作品や過去の応募作品が展示されており、世界各国・各地の生活や多様な文化を理解するための、まさに架け橋となっているように感じました。一つ一つ立ち止まってじっくり見たくなる作品ばかりです。

 

国際平和展示室で紹介されていた作品。「紛争」「人権侵害」「環境破壊」などがテーマの絵が、子どもたちの平和への想いを伝えます

 

 

そして、「こどもファンタジー展示室」にも少しお邪魔しました。

 

 

“こどもたちの五感をくすぐるファンタジーの世界”ということなのですが、光で絵を描くことができる部屋や絵に触ると音が出る部屋など、様々な遊びがあり、大人のこども心をくすぐられるような、そんな空間でした。

 

鏡の国ではこんな写真も!

 

 

■3階 企画展示室

 

次は3階の企画展示室へ。ここでは、NHKの番組でも知られている岩合光昭さんのミニ写真展『ねこのとけい』が開催されており(12/27まで)、約80点の猫の写真が展示されていました。猫たちの可愛らしさに癒されたのはもちろんですが、その背景に写る街の色や景色から、その国の人々の暮らしぶりも垣間見ることができたように思えます。

このような企画展は、異文化理解や国際平和などといったテーマを、より様々な角度から伝えるため、年数回実施されています。

 

 

 

■2階 「情報フォーラム」と「映像ライブラリー」

 

2階には、「情報フォーラム」と「映像ライブラリー」があります。いずれも、「国際理解」「人権」「平和」「多文化共生」に関わる書籍や資料、情報が豊富で、貸出も行っています。司書の深野さんにお聞きすると、特に多いのが学校の先生の利用で、アクティブラーニングに使用できるようなカードやDVDも充実していました。

 

 

2年前から情報フォーラム内に設置されているのSDGsコーナーです。

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。

 

このSDGsコーナーでは、特に神奈川県が推進している「かながわプラごみゼロ宣言」にも繋がるような、プラスティックゴミ問題や、その問題解決のための行動について書かれた本が紹介されていました。私たちの身近では、プラスチックごみを出さないために、エコバッグやマイボトルの持参といったこともSDGsの取り組みの一つですね。

 

「SDGs 17ゴール所蔵展示」として、職員1人が1ゴールを担当し、所蔵されている書籍や資料から選書したものが紹介されていました

 

 

とても広々とした施設ですので、この記事でお伝えできなかった場所も多いですが、建物内にはカフェもありますし、地下には休憩ができるようなラウンジもあります。世界のことを学びながら、一日中過ごせる施設だなと感じました。

 

あーすぷらざでは、「国内外の諸問題を地球規模で考え、身近なことから行動する人、あらゆる人々が平和に人間らしく共生できる社会の実現のため、日々の生活の中で課題解決に向けてとりくむ人」このような人を「地球市民」と呼んでいます。まさに「誰一人取り残さない」というSDGsの目標を一緒に考え行動していく人たちのことではないでしょうか。

 

SDGsは世界の人々の暮らしを知り、理解を深めることから・・・。

あーすぷらざは世界の文化や地球規模の課題を五感で感じ、自分自身が地球市民として今何ができるのか、世界に思いを馳せ、考えることができる施設でした。

 

 

●EVENT/これからの企画展

藤村大介写真展「Habitable zone〜生命居住可能領域〜」

会期:2021年2月9日(火)〜2021年3月21日(日)
※会期変更(当初1月23日からの開催予定でしたが変更になりました)
※祝日を除く月曜休館

イベントページはこちら https://artnavi.yokohama/event/12592/

 

県民が見た世界遺産・絶景・暮らし写真展

(火)~(日)
※会期変更(当初1月23日からの開催予定でしたが変更になりました)
※祝日を除く月曜休館

イベントページはこちら https://artnavi.yokohama/event/12587/

 

●Information

神奈川県立地球市民かながわプラザ(あーすぷらざ)

➤アクセス JR根岸線「本郷台」駅 徒歩3分

➤WEBサイト https://www.earthplaza.jp/

 

取材・文:ヨコハマ・アートナビ編集部
写真:大野隆介

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