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ようこそ区文へ!

vol.6 磯子区民文化センター 杉田劇場

横浜市内11の区*にある区民文化センター(区文)を順次ご紹介するシリーズの第6回は、横浜市磯子区民文化センター。「杉田劇場」の愛称で親しまれています。磯子の地域力を活かし、地域の文化拠点として地域と一緒にできることに力を入れて取り組んでいるという活動の様子を取材しました。(上記写真:左は「杉劇リコーダーず」講師の吉澤実さん、右は館長の中村牧さん)

*2022年3月1日に瀬谷区民文化センターが誕生し、「市内11の区」となりました。

 

➤これまでの「ようこそ区文へ!」シリーズの記事はこちら

ロビーには旧杉田劇場の外観写真やポスター、美空ひばりの写真などが展示されている。(*写真右:杉田劇場外観写真 昭和21年~25年 撮影時期不明/片山茂氏寄贈)

JR根岸線、京浜急行線、シーサイドラインの3線の駅からアクセス可能という交通至便な「杉田劇場」。この愛称の由来は、館内ロビーに展示されている古いモノクロ写真からわかります。実は1946(昭和21)年に、現在の地からほど近い場所に「杉田劇場」という名の劇場がオープンし、まもなく当時8歳の美空ひばりが初舞台をふんだのです。そして2004年、磯子区民文化センターが開館するにあたり愛称を公募した際、「杉田劇場」という提案が多数あがり、磯子区の歴史をいろどったこの劇場の名が採用されました。以来、地域との結びつきを活かした活動や事業を繰り広げて、磯子区民をはじめ市民に活発に利用されています。

取材に伺った日曜日も、多くの利用者が訪れ、活気にあふれていました。リハーサル室の扉を開けると、ずらりと30人以上もの「杉劇リコーダーず」メンバーが大小様々なリコーダーを手にし、重層的な響きを奏でています。練習していた曲は『少年時代 バロック風』。ソプラノ、アルト、テナー、バスの4つのパートが重なり合い、柔らかな音が響き合います。

「杉劇リコーダーず」は“杉田劇場の顔”として、地域のお祭りや行事、学校のイベントなどにひっぱりだこのリコーダーアンサンブルです。開館翌年の2006年に磯子区民の企画アイデアから生まれ、結成15年目を迎えましたが、当初の参加者は12人だったそうです。今は11歳から80代までの実に幅広い年代の50名を超える老若男女が参加しています。

指導をしているのは、リコーダー界の第一人者・吉澤実先生。NHK教育テレビの番組「ふえはうたう」(1986~1997年)や「趣味悠々」(2001年、2009年)で講師をされていたことでも知られています。

「前打音を強調してみてください」「ここはアジタート気味に」「このバスはしっかりと」などと指示を出すと、すぐに修正して演奏するメンバーのみなさん。すると、吉澤先生は「うまくなったねぇ」とほめちぎります。

この日の練習は3月19日の定期演奏会に向けて熱が入った様子でした。驚いたのはレパートリーの幅広さです。『大きな古時計 モーツァルト風』『シャンソネッタ・テデスカ』といった、中世、バロック、ルネッサンス、古典派の曲から、現代の作曲家に依頼したオリジナル曲までを豊かな厚みのある演奏で聞かせてくれました。

参加して4年目の西薗さん(写真左)と、7年目の岩井さん(写真右・中央)

メンバーのみなさんに「杉劇リコーダーず」の活動にはどんな魅力があるのか、お話を聞きました。

「2年生のとき、小学校で『杉劇リコーダーず』の演奏を聞いて、楽しそうだなと思って入会しました。いろいろな曲をみんなで息を合わせて演奏するのはとても楽しいです」と話すのは、小学校5年生、最年少の西薗さん。参加して4年目になるそうです。

お友達に誘われて7年前から参加している岩井さんは、視覚に障がいがあるため、楽譜は使わずに録音をしてソプラノ・パートの旋律を覚えるのだそうです。「やっと少し指が動くようになってきて嬉しく思っています。なかなかうまく吹けずに苦しいこともありますが、みなさんと会える楽しい場所になっています」とにこやかに話してくださいました。

「杉劇リコーダーず」結成当初から参加している山口さん(写真左・中央)と山本さん(写真右・中央)

山口さんは最も古くから始めた12人のメンバーのひとり。「最初は逆さまにリコーダーを持って、吉澤先生に笑われたくらいなんです。正しい持ち方から始めて、楽譜も読めるようになり、最近やっとアンサンブルを楽しめるようになってきました。15年はあっという間でした。日々の生活の励みになっています」

同じく、初期から始めた山本さんは、リタイアのタイミングと「杉劇リコーダーず」の結成が重なり、思いきって参加したといいます。「この15年でどんどん新しいメンバーも入ってきて、みなさん上手なので、自分自身もがんばらないと!と刺激を受けています」と元気に語ってくださいました。

他にもたくさんのグループを指導していらっしゃる吉澤先生に「杉劇リコーダーず」の特徴を伺いました。
「まったくの初心者で始めたところがまず違いますね。リコーダーはおろか、音楽に初めて関わる人もいらっしゃいます。子どもからシニアまで老若男女が、世代を超えて一緒に演奏を楽しむところも大きな特色です。とてもみなさん熱心で、週に一回の練習以外にパートごとに自主練習もされて、びっくりするほどテクニックも表現力も進歩しました。誇らしく思うアンサンブル・グループです」

15年続けてきた成果も感じているそうです。
「私も一緒に15年という年月を歩いてきました。みなさんから生きる力や光をいただいています。本当にうまくなりましたし、レパートリーも広がりました。リコーダーは古い歴史を持つ楽器で、人の声や歌うことにちかいので、様々な時代の曲を歌うことでひとりの人間の人生をたどるような意味もあります。それがみなさんにとっての楽しさや充実感につながっているのでしょうね」

リコーダーという楽器の魅力も相まって、様々な世代が集い、輝く機会・場所となっている様子がうかがわれました。

*2019年4月「杉劇リコーダーず 第8回定期演奏会」の様子 Photo by sqs Keiichi Kimura

杉田劇場では、「杉劇リコーダーず」の他にも、地域の力を活かした活動を多く実施しているということで、館長の中村牧さん、副館長の堀利文さんにお話を伺いました。

「磯子区は人口約17万人で、横浜市南部にあり、古くから住宅地が多い土地柄です。区内に15の神社があり、お祭りも盛んです。つまり古くからの地域コミュニティ力が高く、区民のみなさんが郷土愛に満ちていて、文化的な背景を誇りに思い大切にされているのが特徴であり魅力だと思います」

こうした地域の文化を発掘し、次の世代につなげる事業として、2005年から始まった「いそご文化資源発掘隊」では、これまでに53回にわたり磯子区の歴史や伝承・文化をテーマに、講演会や街歩き企画を実施しています。

幻の杉田梅、歴史的文化財、神社、美空ひばり生家やゆかりの劇場、「磯子小唄」など、区内各地に眠る有形無形の文化資源を再発見してきました。そうして調査・発掘した「もの・こと・ひと」を記録し報告する冊子も作成しました。

*写真左:第51回いそご文化資源発掘隊「校歌と市歌 もう一つの真実」/写真右:第49回いそご文化資源発掘隊「NTTのケーブル名は歴史の生き証人」洋光台編

また、2月5日の開館記念日に合わせ、1月29日から3月13日まで「杉劇アートdeにこにこプロジェクト」として、展覧会やコンサート、ワークショップなどが館内全エリアで開催されています。

「杉田劇場は地域に根差した劇場として、地域とともに歩んできました。今年は障がいのある人もない人も一緒に、地域のあらゆる人を巻き込みたいと願って、参加する人みんなが笑顔になるようなプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトをきっかけに、今後はさらに磯子区内の外国籍の方、子どもや高齢者、性別にかかわりなく幅広い属性の方に向けて、音楽、演劇、ダンス、美術などの芸術文化に触れる機会を提供していきたいと考えています。たとえば、声優とオペラ歌手の出演による「朗読歌劇」や、磯子区在住のアーティストによるコンサート(真鍋尚之 笙リサイタル)、感染症の影響で制限が続いている学校の活動をサポートする取組みや、誰でも気軽に施設に足を運べるロビーパフォーマンスを復活させるなど、もっと地域を巻き込むプログラムをどんどん展開していきたいですね」

*杉劇アートdeにこにこプロジェクトの様子写真左:2022年2月4日開催 米良美一講演会「波乱万丈物語~未来へ向けて」/写真右:2022年2月6日開催 杉田劇場にこにこ冬まつりライブ2022)Photo by sqs Keiichi Kimura



●Information

横浜市磯子区民文化センター 杉田劇場
➤アクセス  JR京浜東北線(根岸線)新杉田駅より徒歩3分、京浜急行線杉田駅より徒歩5分
➤WEBサイト https://www.sugigeki.jp/

●Event
横浜市磯子区民文化センター 杉田劇場でこれから開催されるイベントはこちら



●磯子区内のおすすめスポット
 横浜市能楽堂 久良岐能舞台(横浜市磯子区岡村8-21-7)

磯子区岡村町に位置する「久良岐能舞台」は四季折々に彩りを変える庭園に包まれた格調高い施設です。能・狂言などの古典芸能をはじめ、日本舞踊、箏曲・三味線・尺八、民謡の稽古・発表会や茶道、俳句の会、展示会など様々な催し物の活動の場として活用されています。

➤アートスポット紹介ページ https://artnavi.yokohama/art-spot/713/

*磯子区民文化センター杉田劇場との共催で、「久良岐の森で音探し」をこれまで2回開催。久良岐能舞台の庭園内に、秀麗な雅楽の音が響きました


取材・文:猪上杉子
写真:大野隆介(*印の写真以外)

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