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ようこそ区文へ!

vol.5 青葉区民文化センター フィリアホール

横浜市内10の区にある区民文化センター(区文)を順次ご紹介するシリーズの第5回は、横浜市青葉区民文化センター、愛称は「フィリアホール」です。「友愛、友好関係、愛着」を意味する「フィル」に因み、人と街のハーモニーを実現したいという想いから名付けられたフィリアホール。企画・制作を担当される芥川純一さんにお話を伺い、本格的な音響機能を備えたコンサートホールの魅力に迫りました。

併せて、「未来にはばたくドリームコンサート」&「フィリアホール室内楽アカデミア」修了生による「サマー・コンサート2021」の様子もお届けします。

 

➤これまでの「ようこそ区文へ!」シリーズの記事はこちら

弦楽四重奏の奏でるメロディーが、フィリアホールに心地よく響きます

東急田園都市線、青葉台駅の西口から目の前に見える青葉台東急スクエアSouth-1。その本館5階にあるのがフィリアホールです。連絡通路(サウス・デッキ)を通れば、雨に濡れることなくホールに行くこともできます。

多目的に作られていることが多い文化センターの中で、フィリアホールは、クラシック音楽を演奏するのに特化された仕様になっているのが大きな特長です。500席のコンサートホールを始め、小規模なサロンスペースにもなるリハーサル室、少人数でレッスンが行える3つの練習室、そのどれもが生音を演奏するのに適した音響設計になっています。

500席のコンサートホールはシューボックス型の室形で、無駄なく均等な反射音によってどの客席へも臨場感溢れる音が到達します [写真提供:フィリアホール]

コンサートホールは、サントリーホールほか国内外の名ホールを設計した永田音響設計が設計し、室内楽から小編成オーケストラまでの編成の際に、よく響く構造になっており、主にクラシックのアーティストによるリサイタルやコンサートが行われています。一般の方への貸し出しは音楽発表会での利用が多いそうですが、プロの演奏家が録音やリサイタルのために利用することもあるとか。

リハーサル室は、合唱や合奏の練習で使われることが多く、小さな発表会などもこちらの部屋で行えます。練習室は室内楽のレッスンや個人練習に利用され、中には和楽器の練習に使われる方もいるそうで、リハーサル室、練習室はほぼ100%に近い稼働率になっています。

利用される方の印象を芥川さんにお伺いすると「小さなお子さんからご高齢の方まで、幅広く利用していただいています。私個人の印象なのですが、青葉区は楽器を演奏する方が多いようで、特にヴァイオリン等の弦楽器をやっている方が他の区に比べて多いように感じています」とのこと。利用状況を見てもその様子がうかがえます。

フィリアホールから巣立って行った若手演奏家たちによるサマーコンサートでの演奏風景

フィリアホールでは、プロの演奏家が出演するのコンサートの他に、若手演奏家の支援にも力を入れています。そのひとつが、2013年度から5年間実施された「未来にはばたくドリームコンサート」です。

青葉区に住んでいる方々から音楽企画を募集し、企画した区民自身が運営まで行うという「区民企画」から始まった「未来にはばたくドリームコンサート」。当初は小学生から高校生を対象に、オーディションで選ばれた若者がプロの演奏家とステージに立つという、プロと『共演』することに重点を置いたプログラムでした。

「ソロの指導は受けられても室内楽(誰かと共演する)というのはなかなか機会が無い」「大学に入ってからでもチャンスが少ない」という声が若い人たちから聞かれ、企画を立ち上げたボランティアの方々も「室内楽はプロになると必ず通る道なので、早い段階から体験させてあげたい」という点を重視し、その思いをフィリアホールがサポートしました。

2018年からはフィリアホールが主催として運営を引継ぎ、参加対象を大学生から25歳の若手まで拡大して「フィリアホール室内楽アカデミア」と名前を変えて実施されています。

アーティスティックディレクターの海野幹雄(チェロ)、川田知子(ヴァイオリン) 、直江智沙子(ヴァイオリン)、須田祥子(ヴィオラ)、海野春絵(ピアノ) といった講師陣とのレッスンの様子 [写真提供:フィリアホール]

過去に参加された方々の感想を伺うと、大半の方が「初めてプロの奏者と一緒に演奏が出来てとても大きな経験になった」とイキイキと答えてくれるそうです。また親御さんからも、コンクールとは違った室内楽という経験をさせることができて、とても魅力を感じたと高評価を得られました。

こうした活動が定着するにつれ、修了生が後にコンクールで入賞したり、ソリストとして巣立って行く人も出始め、修了生をさらに応援するこれからのカタチとして発展させたのが、2年前からスタートした修了生コンサート。2021年には『「未来にはばたくドリームコンサート」&「フィリアホール室内楽アカデミア」修了生による「サマー・コンサート2021」』というタイトルで開催されました。

今回は出演される方々に直接お話を伺うことはできませんでしたが「室内楽の魅力を伝えたい、演奏を楽しんで欲しい」「コロナ禍でも、少しでも気持ちが晴れてくれたら」と、それぞれに思い入れのある楽曲を選び、ステージに立たれるとのことでした。

フィリアホールの入り口では、開場の30分以上前から並んでいた来場者も見受けられました

コンサートは入場無料の予約制で開催され、8月5日の当日は自由席ということもあって、会場前から並び始める人も多く、若い世代の演奏に期待が高まります。会場では新型コロナウイルス感染防止のため、検温や消毒の他、座席を空ける等の対策が行われ幕が開きました。

前半に登場するのは小学生から高校生までの若い演奏家たちです。拍手で迎えられた時にはまだ緊張の面持ちでしたが、演奏が始まるとミュージシャンの顔に変り、情感を込めた演奏が行われました。プロのチェロ奏者であるお父様と一緒に演奏する弦楽四重奏、ヴァイオリンとピアノの共演、お友だちと共演したチェロとピアノ合奏など、同世代が演奏する楽曲に熱心に耳を傾ける客席の子どもたちの姿も印象的でした。

休憩を挟んだ後半は、大学生以上の方たちが登場します。前半とは違った緊張感の中、さらに高いレベルでの演奏は、ひとつひとつの音を大切に奏でる様子が伝わってきます。初めての楽曲に挑戦された方、次のステップに向けて準備を進めている方、そしてフィリアホールで出会った修了生同士で共演した五重奏など、力強く繊細なハーモニーをたっぷりと楽しませていただきました。

これからの活躍が期待される若い世代の演奏に、会場に訪れた方々も惜しみない拍手を送り盛況のうちに幕を閉じました。

サマーコンサート終了後の集合写真 [写真提供:フィリアホール]

今後の活動について芥川さんに伺うと、修了生に対するフォローに加え、次の企画として「参加者の層を広げていきたいと考えています。一般の音楽愛好家向けの機会も設けて欲しいという声もありますし、より地元の人たちがプロと共演できるような場を作りたいというのもアイデアとしてはできていますね」と新たな目標について語ってくださいました。

クラシックに特化した音楽の拠点として、様々なプロジェクトに取り組んでいくフィリアホール。これからも地域との素敵なハーモニーを響かせてくれることと思います。

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